記事
最新の情報をお届けします
20:33:50
AO入試専門塾の経営者による、WEBサービスリリースからバージョンアップまでの開発記録

18.04.19 神崎さんインタビュー

プロトタイピング道場 (以下「道場」) 場の参加者である神崎さんに、リリースまでの流れをインタビューしました。Landmark (ランドマーク) は、プロトタイピング道場で初期のプロトタイプ構築を支援させていただきました。

自己紹介とサービス紹介

斉脇: 本日はありがとうございます。簡単に自己紹介の方よろしくお願いします。

神崎: カンザキメソッドの神﨑です。普段は、AO・推薦入試専門塾を主宰しています。簡単にいいますと、小論文の指導をする塾の経営者です。元々は、東進ハイスクールなどで講師をしていました。

斉脇: どんなサービスを運営されているのですか?

神崎: Landmark(ランドマーク)は、2020年の大学入試改革で注目されているAO入試の出願書類作成や活動を支援するサービスです。

学生が出願書類のドラフトを登録します

基準に従って、評価を受けることができます

プロトタイピング道場参加からの時系列

斉脇: 道場からの流れをお聞きしたいなと思うのですが。

神崎: 16年10月に道場に参加しました。当初は、マナカルテという「小学生の親御さん向け、子供の課外活動を記録し専門家がコメントするサービス」を考えていました。このプランでプロトタイプを作った後、色々ヒアリングや事前販売をしていたのですが、実際にお金をとって販売するのは結構難しそうだなと。また、JAPAN e-Portfolio がスタートするという話をその時期に知ったのもあり、現在の Landmark のプランに変更しました。

斉脇: そうですよね。Landmarkのプロトタイプを作ったのが年明けぐらいでしたっけ?

神崎: 17年1月にプロトタイプを作りました。こちらは事前販売の段階で、使ってもいいという高校がいくつか見つかりまして、いけそうだなという感じになりました。振り返るとなんですが、当然、本番開発のほうが費用がかかるので、プロトタイプの段階でプランを変更できたのは良かったと思っています。

斉脇: その後、本番開発ですね。

神崎: はい。斉脇さんから、開発会社の方をご紹介いただき、17年の2月から1.5ヶ月ほどで本番開発をしました。道場さんのほうで、ある程度仕切ってもらいつつ、本番開発に進めたので、特に支障はなかったです。

斉脇: エンジニアの採用活動なども特にされていないってことですよね?

神崎: 特にしていないですね。ご紹介いただいた開発会社の方にお願いする形だったので。リリースから1年経ちましたが、現在もその開発会社の方で運用や新規開発をしていただいているので、良かったと思っています。

斉脇: その後、順調にリリースされたのですか?

神崎: 3月末の段階で利用できる状態でしたが、高校で利用するという都合もあり、実際は5月頭から本格的に利用開始になりました。ただ、利用開始してみて、初期のバグが見つかり結構大変でした。バグが生徒さんの認証の部分だったこともあり少々混乱しましたね。開発会社は継続的に見てもらえていたので、5,6月あたりでバグ修正をしてもらいました。

斉脇: 初期ちょっと大変だったけど、実際にユーザーが使うところまでいった感じですね

神崎: その後は本格的に利用していただき、7月に生徒さんのほうから結構強烈なフィードバックがきて、凹んだりもしました。10月でAO入試の提出シーズンが終わって今年度の利用が落ち着いたという感じです。合計で約50名ぐらいの生徒さんが半年間、月1回ほど提出した形になりました。

斉脇: おぉ、素晴らしい!結構ちゃんと使ってもらえていますね!

神崎: 10月でちょっと落ち着いたので年末にかけて、バージョンアップの企画を考えました。18年の年始から現在にかけて開発をしていて、そろそろv2をリリースするという段階です。

塾経営者がWEBサービスを運用する

斉脇: 神崎さんは、お忙しいと思うのですが、現在の時間の使い方はどんな感じなんですか?

神崎: だいたい週の労働時間が50時間ぐらいだと思います。正直その中でLandmarkに使えている時間は10パーセントぐらいかなと。それ以外だと高校の向けの進学講座を担当しているので、それが50パーセントぐらい。塾の経営が20パーセント。その他、学校の入試制度のコンサルティング、原稿の執筆などが20パーセントというような時間の使い方だと思います。

斉脇: なるほど、やはりかなり忙しいですね。

神崎: どちらにしろ、小論文や志望理由書の添削がメインになります。現在塾のほうで、添削員が15名ほどいます。

ヒアリングとフィードバック

斉脇: 事前販売やヒアリングはしましたか?

神崎: プロトタイプ開発後、本番開発の前に1校では利用が決まっていました。そのため、実際に使ってもらいながらナレッジをためていけたらと思っていました。

斉脇: リリース後なかなか強烈なユーザーの意見があったようですが。

神崎: いつ返ってくるかわからない。どうなっているかわからない。などなど厳しい意見もいただきました。対面とシステムの違いが如実に出た感じでした。学生さんも思った通りに出来上がらないので、システムの方がイライラすることが多いですね。対面だとうまくなだめながら指導できますが。

エンジニアとのコミュニケーション

斉脇: 現在も採用はしていませんか?

神崎: プロトタイピング道場から、外注先企業を紹介してもらって、そこに依頼しました。そのため、直接は採用していません。

斉脇: 本番開発をやってみてどうでしたか?

神崎: 最初はプログラマーの方と直接コミュニケーションをとりながら開発を進めていたのですが、なかなかそれがうまくいかなかったので、途中からはディレクターの方を入れてもらって、開発を進めました。

斉脇: なかなか難しかったですか?

神崎: 最初のやり方は、Trelloを使っていました。ただ、タスクの追加方法がわかりづらかったのか、プログラマーの方によくわからないと言われることが多くて。。また、どこまで追加していいのかよくわからず、お互いイライラしてしまって。なかなか質問や相談もしづらくなってしまいました。

斉脇: なるほど、そうなんですね。

神崎: そのため、こんなことをやりたいとディレクターの方に伝えてから、タスクに変換してもらう形にしました。私の場合はこのやり方がフィットしました。プロジェクト自体1人でやっているので、ディレクターの方に相談できるというのも大きいですね。定例を設けているわけではないですが、チャットベースで相談しつつ、1ヶ月に1回ほど対面で話しています。

開発予算

斉脇: 資金調達はどうでしたか?

神崎: 一応チャレンジはしたのですが、めちゃくちゃ儲かるビジネスでもないのでなかなか投資家の方には理解してもらえず。本業の延長なので、本業の利益のなか予算をとって開発しています。今後も外部資本の調達はあまり予定していません。

斉脇: 予算とかってどうやって管理していますか?

神崎: Landmark v1の開発は、2ヶ月間で一気に開発してもらいましたので、2人月分の費用がかかりました。その後は、月額固定数万円でバグ修正などを依頼していました。v2の開発は、予算上限を決めた上で、タスクを整理し、優先度を調整して開発をしてもらっています。

ビジネス展開について

斉脇: 競合はどんなところになりますか?

神崎: JAPAN e-Portfolio、リクルートが運営しているスタディサプリ、ベネッセとソフトバンクがやっているClassi、あとはFeelnoteなどが営業していると比べられる会社になると思います。ただ、小論文や志望動機の添削をしているサービスはないので、直接の競合という感じではありません。添削という点では、やはり紙の添削業者が競合になります。また先ほどあげたサイトはeポートフォリオのシステムという感じですが、Landmarkは添削指導サービスというポジションになります。

斉脇: 学校向けの難しさはどうですか?

神崎: 決裁権を持っているのがだれなのかわかりづらいといのはありますね。進路指導部長が必ずしも決裁権をもっているというわけではないので。あとは、校長先生次第というところですね。そのため、学校によって営業の方法が全然違うところも大変ですね。

斉脇: 代理店とも調整していましたよね?

神崎: やはり代理店を挟むと値段が安くなりすぎてしまうので途中でやめました。競合が紙の添削業者なので、他の業者よりも安くしないと売れないという話になってしまうので。

斉脇: 決済フローが大変そうな話を聞きましたが?

神崎: 最初は、親御さんが直接申し込み、クレカ経由で決済をしようと思っていました。ただ、制度の都合などがあり現在は申込書に記入していただき、銀行振り込みをしていただいています。

斉脇: 今後の営業戦略は?

神崎: やはり学校向けの営業のハードルが高いなと思っているので、toC向けにダイレクトで販売できないかなと考えています。WEBマーケティングに力を入れて、親御さんに直接申し込んでいただき、サービスする形式にしようかと思います。eポートフォリオの方向ではなく、小論文の添削サービスになるといいなと思っています。

業務の効率化

斉脇: ちなみに、現在の添削オペレーションをどのようにやられているんですか?

神崎: まず、送られてきた紙の小論文/志望理由書をスキャンしてPDFにします。そのPDFを添削員さんが15人ほどいるLINEグループに投稿します。すると、添削員さんの1人が添削作業をPDFで行い、再びLINEグループに投稿してもらいます。別の業者からの添削依頼の場合は、Dropboxを使ってURLで共有しています。業者の方は、カラー印刷した上で学生の方にお返ししています。

斉脇: すごい効率化されてますね!

神崎: 元々は、全部紙でやって郵送していました。17年の頭ぐらいからPDFで添削するようになりました。18年の頭から業者へも郵送ではなく、Dropboxで共有するようになりました。業者への共有は、原稿用紙のフォーマットを共通にしたので可能になった感じです。ちなみに、PDFでの添削はAdobe Acrobatで行なっています。添削での一番のリスクは原稿が紛失してしまうことです。電子データでやることでそのリスクがなくなるので安心して添削員にお願いすることもできます。

斉脇: こういう仕組みをLandmarkに取り入れられると、さらに業務の効率化ができそうですね

神崎: はい。Landmarkの裏側の効率化も進めていきたいと思っています。

ビジョン

斉脇: どのような展開を考えていますか?

神崎: 自分がいなくても、添削できる仕組みを作りたいです。それにより、安い価格で高品質な指導を受けられるようになると思います。そのためには添削員の仕事を楽にする必要です。

斉脇: 大学入試的にはどうですか?

神崎: もちろん大学入試に合格するサポートをするというのが一番わかりやすい価値だと思います。ただ、受験に合格するために暗記して書くということもあります。こういった現状は変えていきたいです。

斉脇: 受験指導以外の価値ということですね。

神崎: 小論文は物事を考えるということです。小論文を通して、論理的に考える力を身につけてもらいたいです。受験ためかもしれませんが、考える力を持った子供が増えて欲しいと思っています。論理的に考え、現状を適切に批判し、どうやって創造するか という力がつきます。自分の主張をできる子供が増えることでよりよい社会になると考えています。

斉脇: 本日は、お忙しい中ありがとうございました。

神崎: ありがとうございました。