小さくスタートして、マイルストーンを置きながらプロダクトを育てていく意識が重要。
16.11.10
参加者インタビュー | 003
岩下広武さん

社会人でも学び続けることは当然になる

ーーー 簡単に経歴の紹介をお願いします

仕事としてはさまざまな顧客企業における人材育成や人材開発に関わる課題に関する支援をしています。

デジハリに入学した一つのきっかけは、社内プロジェクトで「2030年の働くを考える」というテーマについて考えたことです。その中のサブテーマに「社会人の学び直し」というのがあって、これを私は主に考えていました。これからは60歳でスパッと辞めて引退という時代ではなくなって、それ以降も働き続けることが当たり前の世の中になるのではないかと考えると、社会人になっても学び続けたり、学び直したり、ということは当然なことになるのかなと。
そこでふと、自分自身も学びなおすってことをやらないといけないのかなと思ったのが最初のきっかけでありました。

デジハリでは、EdTechの第一人者である佐藤昌宏先生のエフェクティブ・ラーニング・ラボに所属しています。元々、教育に興味があったので、最初から佐藤先生のラボに入りたいと思っていました。このラボでは、デジタルテクノロジーを活用し、教育分野にイノベーションをもたらすことを目指して活動しています。たとえば今年度の活動でいうと、今年の前半に小学校でプログラミング教育を必修化しよう、という話が世の中で盛り上がりましたが、そういった風潮の中で、どこまで小学校の授業で教えるのがベストなのか、そもそもプログラミングを必修化する意味、結局なんのためにやるのか、そんなところをテーマにして皆で探求しています。

作ってみないと机上の空論で終わってしまう

ーーー 今回プロトタイピング道場に応募したきっかけなどはありますか?

以前に、ラボの佐藤先生から、EdTechのひとつの例としてプロトタイピング道場の紹介をされていました。で、いざ自分が修了課題制作を作り込んでいくというタイミングで、それが結構難航したんですよね。コンセプト、テーマ作りにもかなり時間をかけて、ようやく形が見えてきたところで、これ以上詰めていくには実際に作ったものでやったほうが早い、となったのがこの夏くらいのことです。

私みたいな院生はたくさん居ると思うんですよね。つまり自分で何かプログラミングとかコードが書けて作れないと、どうやって形にしようかというところですごく時間を使ってしまって卒業を迎えちゃうって人です。もちろん自分で手を動かして作るのもある意味では大事なことかもしれないけど、それをどう世に出していくかとかサービスとして仕立てていくかという方がビジネスではと大事だよねっていう考え方というか。

せっかく良いプロダクトの着想を得ても、ある意味で机上の空論のまま終わってしまうのは勿体無いし、かといって今からプログラミングを学び始めるというのも時間的に厳しいというところで、ちょうどプロトタイピング道場の説明会があったので参加してみようかな、という感じでした。なので、直接的な理由はと聞かれると、修了課題制作のためですね。

スキル取得までのプロセスにスポットを当てたプロダクト

ーーー プロトタイピング道場で実際に作ったプロダクトについて教えてください

そもそものプロダクトの背景としては、先ほどお話したように社会人になっても学習し続けることがますます必要になっていきますが、これからの時代、知識そのものはパッと手に入るし、それほど希少価値は無いものになるのかもしれない、というお話を佐藤先生としていました。そこから何が価値を持つのかということを考えた際に、同じ知識でもそこに至るまでのプロセスに違いはあるはず。それは色々なものがあるし、個人の中にあって、それには価値があるんじゃないか。そこで、個人の経験をもっと流通させることができたら面白いのではないかとなったんですよね。それは個人の学びを後押しするものになんじゃないかな、と。

たとえば英語でいうと、英語の教材とかサービスってたくさんあるけど、実際にそれをどうやって使って学べばいいのかって結構わからないじゃないですか。いわゆるすごい人とか、全然できなかったのにこんなにできました!みたいなのは本になってたりしますけど、TOEIC満点は必要ないけど、例えばまずTOEIC750点は超えたいな、といった人とかも居ると思うんですよね。あるいは学習に週に何十時間とはかけられないけれど、仕事や子育てもしながらスキルを身につけた人もいると思いますし、後者の方が参考になる人もいると思います。
うまく自分に合うようなやり方とか学び方をできるだけ見つけられるようなマッチングサイト、何かを習得した経験を売り買いするマーケットプレイスを作れないかなと思い、今回「学びレシピ」というプロットタイプを作りました。同じ肉じゃがをつくるのにも人によっていろいろな作り方のレシピがあるように、同じスキルを学ぶにもいろいろな学び方があるだろう、という意味を込めてこういう名前をつけました。

もっとブラッシュアップしていきたいポイントとしては、経験を提供する側のフォーマットだったり、入力フォームだったりを画一化することでしょうか。学んだプロセスをいかにして流通できる形で入力してもらえるか。経験を提供する側にとっては、どうしてもフリーテキストで入力してね、ってだけだと難しいと思うんです。

最初の機能としては英語に限定していますが、それ以外への展開ももちろんあり得ると思っています。社会人の求めているスキルって圧倒的に英語が多くて、それ以外は極端に少なくて同じくらいなんですよね。だからこそ、ニッチなスキルや経験を求めている人も居ると思いますし、マーケットとしてはありそうだなという印象です。

作りての人が何を知りたがっているのか

ーーー 今回プロトタイピング道場で学びになったポイントってどこですか?

一番気づかされたポイントは、作り手の人が何を知りたがっているのかということです。

たとえば、プロトタイピング道場に入る前の面談のときだと思うんですけど、「何人ぐらいの人が使うんですか?」みたいなことを聞かれたんですよ。どのぐらいの人がこの画面を使うかによって、検索が必要なのか、どのぐらいの情報が一覧で載るのか、というのも違ってきますよね。
あまりそういったことを意識してこなかったので、とりあえずたくさんの人が使う完成型を目指したくなっちゃうんですけど、考え方としてプロトタイプってある意味フィードバックを得るために必要最低限のものを作るべきだな、などは実際にやってみないと分からなかったことです。

いかにして完成型に持っていくか、というところを勉強できました。小さくスタートしてマイルストーンを置きながらどうやってブラッシュアップしていくか。完成型を最初に考えてそれ通り作ってもらおうとしても、最初から全ては説明できないということに気付いて。プロトタイピング道場だと、そこを順を追ってしっかりと聞き取ってこちらのやりたいことを理解してもらえるし、実際に短い期間で実物が上がってくるところまで進められるから、今まで教科書的にしかわかっていなかった部分の理解も進みました。

ここからが重要 良いプロダクトにするために

ーーー これからについて教えてください

ここまでスムーズに進めてもらったので、むしろここから頑張らないといけないし不安というのはあるかもしれないですね。もちろんプロトタイピング道場でやってきたような形で、フィードバックを貰ってブラッシュアップして改修して……という流れは分かるんですが、実際に上手く進めていけるかですよね。経験を提供してもらう方の入力方法については前述の通りですし、自分とは違う人が見た時に本当にお金を払ってでもそのレシピを知りたいと思ってもらえるかどうかというポイントもあります。
レシピを購入すると経験を提供した人に実際に話が聞けるなど、サービスの広がりについても今後考えていきたいと思っています

なかなか正解が無いものなので難しいことはいろいろとあると思いますが、具体的に人に話を聞いたりプロトタイプへの反応を得ながら、良いプロダクトにしていければと思っています。